Fate/EXTRA CCC
Fate/EXTRA CCCはFate/EXTRAと世界観を同じにしながら細かい部分が異なるいわゆる並行世界の、さらにその裏話だ。
月の聖杯戦争の最も特徴的な部分はトーナメント方式である点だ。
つまり「他の奴は全て敵」、味方は自分のサーヴァントだけ。
しかし、Fate/EXTRA CCCでは目的が聖杯に至ることではなくなる、それどころではなくなる。
月の裏側に閉じ込められた彼らは脱出のため手を組むことにする。
Fate/EXTRAで敵だったマスターたちは今回頼れる(?)仲間たちとなるわけだ!!
仲間たちと目標に向かい協力し合う、俺が好きなシチュエーションの一つだ。
世の中どうしようもないほど非協力な奴もいて、きっと俺も時にはそんな存在になってしまっているけれど、きっと俺が幸せに生きていく上で大切なことなんだ。
この話における主人公たちの目標は大きいものから
①事態の解決(手段 : サクラ迷宮の踏破、BBの撃破)
②サクラ迷宮を守るセンチネルの撃破(手段 : 戦闘、SGの取得)
③サーヴァントの強化(手段 : 戦闘)
となっている。
この中で最もこのゲームの特徴となるのが②だ。
SG(Secret Garden)を集める、このシステムは誰もが内に抱える嗜虐性を自覚させられる。
何故って?
ここまで散々遠回りしてきたんだからな、俺もそろそろ限界だ。
Fate/EXTRA CCCは「乙女の秘密を明らかにしてそれを元にそいつを叱りつけるゲーム」だ!!!!!!!
凄くない?天才じゃない?
そんなシステムのゲームが奈須きのこの手によって書かれる、声がついてて動いちゃう。
夢中になるわけだよ……
だが、これで終わりじゃない。
奈須きのこの作るストーリーが何故いいか?
それはそのキャラが持つ魅力をこれでもかとぶつけてくるからだ。
それぞれが持つ信念がこれでもかと掘り下げられる。
俺はそうしたものを自分の考えと照らし合わせて考え方に活かしたり、いいと思ったものを取り入れたりするのがとても好きだ。
例えば、今作の最大の見せ場、おしおきモードは入手したSGを使い女の子を追い詰めていく。
もちろんその内容は相手により違う。
違うということは、それだけ多岐に渡るということ。
中には自分にも当てはまってしまうSGがあるんだ。
認めたくないけど捨てられない性、それを指摘されると腹立たしいけど付き合って生きていくしかない、それが自分だから。
そんな厄介なものを受け入れていくことができる機会が与えられるって素晴らしいことだと思う。
自分で思ってるほど自分のことって正しく見られない。
パッションリップはまさにそういうキャラクターだった。
自分の異常性から目を逸らし続けた、そうして怪物であり続けた。
だからこそ、岸波白野という存在がどれだけの救いになったのかという点に話が移るのだけれど。
あまりにわかりやすい異常性、外見では彼女には伝わらない、目を逸らし続ける。
だから、本人すら認識できていない異常性を突きつけた。
君の外見以上に君の内面が怪物的なのだと。
お前は他者を受け入れない、だからずっとひとりだと。
そして、最後に、彼女の最大の過ちを。
「それは決して、愛ではない」
何より残酷なその指摘は彼女の心を引き裂いた。
人に否定されたことではなく、岸波白野にそう言わせたことが悲しいから。
「・・・・・そんな顔をさせて、ごめんなさい。
酷い言葉を言わせてしまって、ごめんなさい。」
「私のためにーーーー
命を賭けてくれて、ごめん、なさいーーーー」
この決戦の前にキャスターは「愛とはギブアンドテイク。想うだけではダメなのです。打算的でないものは、愛ではなく恋と言いましょう」と言うが、まったく、これが失恋じゃないならなんなんだと思った。
愛、恋と言うと俺には1人、忘れられない女の子がいる。
メルトリリスはパッションリップとは真逆の性質を多く持っていた。
加虐体質/被虐体質
神経障害/神経過敏
などを始めとして、書けば書くだけ広がっていく。
中でも最も、今回取り上げたいのはパッションリップは愛を求めるが、メルトリリスは愛を求めない。
パッションリップは否定されれば殺すしかない恋、メルトリリスは否定されれば死ぬしかない恋。
メルトリリスは愛されることを諦めている。
周り全てを自分にする力を持ちながら、自分以外に恋をしてしまった女の子。
求めれば、自分になる。でも恋をした。相手を欲した。
ひとりぼっちは当たり前。
他人と上手に付き合えない少女が見た、ひとりでも生きていけるという寂しい夢。
「その恋は、報われない」
人間としての愛に焦がれた、それができない存在が。
岸波白野という恋「人」を求めてしまった、アルターエゴが。
「貴方にーー私を女の子として、好きになって、ほしかったんだもの。」
俺がFate/EXTRA CCCで一番好きなところはこれでお終いにしよう。
二番目、三番目と続ければキリがない。
当然、ジナコのところも好きだし、ゼロモデルの部分も好きだ。
神話礼装のところはテンションブチ上がる。
でも、話はこれでお終いだ。
あとを思い出したいのなら、知りたいのなら、やることだ。
最後に、口が悪いくせに真摯な童話作家様よりその美しい三すくみを。
愛は求める心。そして恋は、夢見る心だ。
恋は現実の前に折れ、現実は愛の前に歪み、愛は、恋の前では無力になる。
彼女たちに起きた奇跡は、またの機会に。