NRRW雑記

あれが面白かったとか、これが美味かったとか、楽しかったとか嬉しかったとかそういうの残ってるといいかなって思ったので書きなぐってます

劇場版 Fate/stay night Heaven's Feel Ⅰ〜Ⅱ

以前Fate/EXTRA CCCについて話をして、このゲームが好きだと語った。

実はFate/EXTRA CCCとは元々エロゲーであったFate/stay nightの陽の面(FateUBW)(言うほど陽ではない)をFate/EXTRAとした時に、陰の面(HF)を作ろうとなって動いたもの。

そのためサクラファイブ(原案)が出てきたり、SGなどの露出度が高い、というか裸の絵が多くなっている。

ゲームの進め方が「心の奥底に隠された秘密や感情を暴く」という点と合わさり淫靡でインモラルな雰囲気になっている。

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自身のサーヴァントや敵の女の子の秘密をゲットして精神的にも絵的にも丸裸にしよう

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男もできるよ!

 

で、そんなゲームの元になったFate/stay nightに戻るんだけれど、HFは上記の要素を持ちながら、もともと聖杯戦争成り立ちなど聖杯戦争に関する情報を開示するためのイリヤルートがあったがそれが桜ルートと統合されているため話自体も長いし、拾われる要素も、登場するキャラクターも多い。

そんななかでこの映画では特に

間桐桜の抱える心情

間桐慎二の抱える心情

衛宮士郎にとって間桐桜とは?

に要点が絞られた構成になっている。

もちろん他にもイリヤ→士郎の感情とか凛→桜への感情とかアーチャーの立ち位置とかそういった点への配慮および考察具合も凄まじいが、やはりこの三点に勝るものはない。

これから見ようと思っている場合にはとにかくこの三点に注意を配っていれば話の流れを追いやすいんじゃないかなと。

 

間桐桜の抱える心情

桜にとって

士郎→憧れの人、そばにいてほしい相手

慎二→可哀想な人、逃げられない相手

凛→助けてほしい人、誰よりも嫉妬する相手

というのを見てて思う。

このなかでは士郎が一番わかりやすいし、物語の根幹なのだけれど、桜からで一番いい表現がされてるなぁと感じるのは凛。

凛は学校のアイドル的存在として(表面的に作られたキャラだけど)一定以上の地位を築いているし、遠坂家の当主として魔術も非常に優秀。

凛を表すのですごいよくできてるなと思うのが「他人が苦戦することをなんともなくやりとげるが他人がなんともなくやりとげることを苦戦する」みたいなやつ。

そういうところが桜にとって一番妬ましいところで、桜が欲するものを本人はそこまで望まなくても手に入れている。

それは遠坂家の人間という立場だったりもするけれどこの映画では特に士郎との関係にある。

学校では士郎は結構凛に憧れを持っていて、初対面の段階で士郎は桜を知らなかったけど凛は知ってたとか士郎の中での初期値の高さがある。

魔術師としても桜は自分が穢れた魔術師であると士郎に知られたくないためそうであることをひた隠しにし一般人として士郎に守られる立場を選んだが凛は魔術師であることに誇りを持っているので常に堂々としていて(優雅たれ、みたいな話をするとやはりそれが出来ていない桜悲しい)聖杯戦争の正規参加者として士郎と対等な立場=パートナーになっている。

聖杯戦争が始まり、そして凛も衛宮邸に顔を出すようになったことで士郎の周りに凛がいる時間が格段に増える。まぁ嫌でしょうね桜。

そういうのあんまり顔に出さないようにしている空気を感じるけど漏れてるぞ(士郎から凛の話題が出た時、士郎と凛が一緒にいる時の桜の顔を見よう)。

桜は2章までの段階で無意識下で聖杯の中身と繋がり影が一人歩きしたりするようになっているけれど、その影も結局は桜の心の奥底にあるものから来ているわけで、2章までで桜は計3回凛を殺そうとしているんですよね。

(1回目は1章、士郎&凛陣営が臓硯と戦ったあと影はサーヴァントを取り込むためではなく明確に凛を狙った攻撃をしてくる

2回目は2章、慎二のせいで魔力が暴走した結果針が伸びて突き刺さる時限爆弾のような塊が凛の目の前に出現

3回目はバーサーカーがセイバーオルタに敗北し、イリヤを守るために追手のアサシンをアーチャーが追い払い合流しようと気を抜いたその死角から攻撃をしかける)

これ、まぁ説明文的にもわかる通り凛は士郎と一緒にいた時にやられてるわけで、さらに言ってしまうと全部士郎(アーチャーも未来の士郎だし)に助けられてる。

どれも意識的に桜がやったわけではないんだけど、それが余計にそういう感情を隠しているんだって表現になってて妬みの強さがすごい。

桜はそういうマイナスな感情は全般的に抑え込むタチなのではっきりと口にすることってほぼないんだけど、1章では士郎に「もしわたしが悪い人になったら許せませんか?」と自身の穢れを、それで何かやってしまった先の受け皿を士郎が担ってくれるという安心を得てるシーンとか、2章の土蔵で士郎と凛があの夕暮れの校庭(1章で桜から士郎を初めて知ったシーンについて、慎二から、間桐家からではなく桜個人で士郎と繋がりができていた思い出になっていることが語られる)について話しているのを聞いてしまい「私から先輩まで奪わないで…!(うろ覚え、正確にはその思い出まで奪わないで的な言葉だった気もする)」と泣くシーンでは意識がある状態で口から出てた。

2章の方ではこの一件で「士郎を汚したくない(自分と同じ側に立たせてはいけない)」という思いからそこまでは、望んでいても、しなかった桜が凛が関わってきたことでその自制を越えて士郎と繋がりたいと行動に移す。

まぁそれ自体は愛憎劇的にはそれなりによくあるものだと思うけれど、問題はその後で、凛と桜は同じ家の生まれだったけれど魔術師としての考え(その家の魔術は一子相伝なので優秀な魔術の素養を持っている桜がこの家にいても何もしてあげられないという考え。馬鹿野郎、子供にとって家族がいる家にいることより大事なことがあるか)から桜は間桐家に養子として移り、遠坂家と関わることを禁じられてきた。

第1章でも桜は決してそこを破らず「遠坂先輩」とさも他人のように振る舞う(士郎から鍵を貰った時に「大切な人から大事なものをもらったのは、これで2度目です。」と言うぐらい凛のことは常に彼女の中で大きい存在)。

そんななかである朝桜は凛に向かって「姉さん」と呼びかける。

まぁ好意的に解釈すれば離れ離れだった姉妹が生活を共にしてついに歩み寄れた感動のシーンなんですけど、桜がこの行動を他ならぬ「凛」にできたっていうのがこれまでの桜→凛の感情からは考えられないんですね。

ここで士郎と結ばれた心の余裕が生まれるので、その後のシーンで凛のことを「姉さん」と呼べるわけです。

劇場版Fate/stay night HF パンフレットより須藤監督インタビュー

はい、凛に士郎を取られるという焦りから身体を重ねた桜は重ねられたことで羨望と嫉妬と劣等感の対象である凛(こちらからではなく向こうから来て何かして欲しい)に自分から歩み寄れるだけの余裕を手にしたわけです(それらを上回れるほど満たされた)。

もぉ〜〜とにかく好きだけど大っ嫌いだし助けて欲しいお姉ちゃんに対するこのドロドロ具合がよく表現されてる。

たまんねぇぜなぁおい。

 

間桐慎二の抱える心情

慎二にとって特に重要なのは

士郎→馬鹿なやつ、使えるやつだけど自分より下

桜→馬鹿にしやがって、僕が間桐家の魔術を継ぐんだ

というのが見ていてわかると思う。

慎二は魔術師の家系に生まれながら魔術の才能、というか魔術を使うために必要な魔術回路がゼロ……

魔術師の家系なのに魔術が全くできないことが彼にとって一番辛い状況を生んでいる。

他のことに関しては実力でトップクラスになれるのに魔術はからきし、そして魔術師の家で魔術以外の要素なんてどうでもいいわけで、間桐家にとって慎二という存在ははっきりと「いらない子」でしかない。

他の家から引き取られて来た桜を最初のうちは可哀想なやつだなと思っていたが、桜は自分が間桐の魔術を継げないのでそのために来たのだと知ってしまうと家族からは使えないやつとして扱われ、そして桜からも「可哀想な人」だと見られることで慎二の性格はどんどんねじ曲がっていった。

そんななかで魔術師であることを隠して(そもそも使えないので魔術師ではないのだけれど、それでも彼は自分をそのくくりに入れていたい)の生活、学生生活のなかで士郎と出会いしがらみもなく、適度に優越感を得られるその関係は当時の慎二にとって何よりも心休まる時間だったんだろうな…

で、本編では士郎と体育祭や修学旅行?など中学時代はかなり一緒に行動していたのがアルバムの写真からわかるんだけど(これを商品化するのほんと何してくれんだよ感すごかった、2章初日に見にいって桜の鍵買おうかなって思ったのに売り切れてた 悲しみ)、反面高校に進学してからは慎二が士郎と写っている写真はパタリとなくなる。

士郎は弓道部を1年生の夏頃に退部するけれど、その前に怪我をした士郎の家に桜が訪れるようになる。

士郎の怪我に対する慎二の態度は他のどのシーンの怒りとも違う、見ればわかる。

士郎に対する特別感情すぎる。

来た理由には蟲爺の薄汚れた思惑もあるけれど、メインは士郎の家事手伝い。

ちょっとその辺どうだったか忘れたんだけど、慎二なりに士郎に対して気を遣ったんじゃないかなぁって思う(お前今怪我してるだろ?だからさ、しょうがないから妹を貸してやるよ衛宮  みたいな)。

その頃の慎二にとって士郎より親しい人間とかいないでしょ。彼なりに大事に(そのつもりはなくても)しちゃうでしょ(同時に桜に対する大事にしてなさが滲み出る?)。

で、そのあと怪我が治ったけど火傷痕が残ってること、バイトが忙しくなるという理由から弓道部をぱったりやめる。

ここの慎二が何を思ったかって、2章で士郎はそれをしないって散々言われていたけれど、やっぱり裏切られたと思ったんじゃないかなと。

そこからはひねくれ慎二なので日常での交流もそっけなくなる。

対して桜は士郎と触れ合ってどんどん人間らしさを取り戻して行くんだから気にくわないだろうなぁ。頭の中では「もうあんなやつ、どうでもいいよ」とか思いながらもなんかいつもイライラしてそう。

でもって桜が高校入ったらまさかの弓道部入り。

一番いて欲しかったやつが消えたら一番きて欲しくなかったやつが来た。

慎二はスペック高いので弓道もかなりできる奴だけど、桜に弓道で勝ったところで結局魔術関連はあれだし桜のことだから「兄さん弓道上手ですね」とかナチュラル逆撫でしてそう。

そんなこんなで聖杯戦争が始まると桜に令呪発現ですよ。

俺だったらやってられませんわ。

でも慎二くん必死の訴えで桜の令呪を使った偽臣の書(詳細は下のを見て)を作ってライダーのマスター(仮)になれたよ、よかったね慎二くん(桜がやりたくなかったのと蟲爺さんがやる気なかったからやらせて貰えただけ)。

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これ以上ないぐらい簡潔にまとまってた

気を良くしたので同じくサーヴァントを従えていた士郎(同じくではない、彼は本当のマスター)に共闘を持ちかけるが決裂。

そんじゃ、いっちょ本気でやり合いますかね……ってバトルムードを出したが瞬殺される(これはライダーってサーヴァントが弱いわけでもセイバーが強すぎるわけでもなく単純に慎二がマスターとして弱いから、そうだよお前のせいだよ)。

ようやく魔術師としての道を歩めるかと思われた慎二くんだったが一瞬で全部崩れた。

蟲爺にも呆れられ燃える偽臣の書、逃げる慎二。

かわいそ…

その後も危ないので(本当は危なくないが)士郎が桜を家に泊めると士郎の家まで出向いてくる。

士郎を煽り怒らせるんだけど、ここ、まずさっきのシーンでサーヴァント同士の戦いでは一方的にやられた慎二は士郎に反撃までしている。

好意的に捉えると士郎と慎二の関係は結構対等って思えるけど、同時にこれ魔術の舞台になるとどれだけの隔たりがあるのかっていう表現でもあるような気がする。

そして、自分に対して激しい怒りを向ける士郎を見てめちゃくちゃ楽しそうな慎二。

士郎に対する特別感情すぎる(2回目)。

 

で、2章になると影や蟲爺の対処が士郎と凛チームの主題になるので慎二の出番は1章より少なく感じるんだけど(蚊帳の外とかいうのはやめてあげよう辛辣すぎるぞ)、前述の偽臣の書をまた作って桜を人質にもうセイバーのいない士郎を学校の図書室に呼び出すっていうシーンがある。

ここではライダーを使って士郎をギッタンギッタンにしてやるつもりでニタニタしてた慎二くん。

しかし、しばらくの一方的な暴力の後ライダーの鋭い蹴りで吹っ飛んだ士郎は慎二に向かって殴りかかる。

サーヴァントの身体能力は普通の人間には耐えられるわけもない威力、どうして無事なんだと狼狽える慎二。

士郎は蹴られたはずの腹に魔術で強化した本を入れていて、それで防御していたことを明かす。

このシーンのね、慎二の「魔術……」が辛すぎるんですよ。慎二には絶対にできない方法でこの状況を乗り切ったわけですからね。

もうここ楽しすぎて変な笑い出そうになった。

そこにアーチャーと凛が駆けつけ、二体のサーヴァントが睨み合う形になる。

ここでついに桜がライダーの本当のマスターだと明かされる(偽臣の書、また燃える)わけなんですけど、それぞれの立ち位置が下のようになります。

 

士           慎

 

凛  

おわかりいただけただろうか。

今この場にいるのはまずサーヴァントが二体、次にマスターが2人、そして元マスター1人と『『『一般人』』』1人。

へへへ……楽しくなってきやがった………

ここから色々話が始まるわけなんですけど、演出が!!!!容赦ない!!!!

何が容赦ないってね、魔術師連中を画面の手前に置いてピント合わせるんですよ。

奥にある慎二くん、何か喋ってて動いてるんですけどよく聞こえないしピント合ってないんですよ。

もう、この場において誰からも眼中にないんですよ。

凛はどっかで慎二のこと「人畜無害」って評するんだけど、無害っていうか、もう同じ土俵にいるものとして見て貰えてない………

それでキレた慎二くんのおかげで桜は魔力が暴走して前述した凛殺害未遂になるんですけど、まぁそれは置いておこう。

そんなこんなでもう何にもならない慎二。

そして最期は……

 

士郎に対する慎二の感情、絶対もっと煩いやつなんだけど悔しいことに掴みきれねぇ……

助けて慎二理解全1マン神谷浩史……

そんな感じで士郎という一個人に対する複雑な感情と魔術師全般に対する(まぁ特にそれが顕著なのは桜)劣等感が見てて楽しいんじゃ……

最期って書いたからわかると思うけど、そうだよ。

 

衛宮士郎にとって間桐桜とは?

これがね、一番根幹なんだけど言葉にし辛い……

言ってしまえば士郎は誰のことだって守るし、誰だって助けるような奴(そこがおかしいよね?って話がUBW)。

そんな衛宮士郎が桜という一個人に対してどんな感情を抱いているかっていうのはなによりも劇中で大きな変化なわけなんですけど、そのせいで一言ではいい辛い。

始まりはただの友人の妹、怪我をしたので家事の手伝いに来てくれた。

そうしているうちに生活の一部になって、彼にとって日常の象徴になった。

そんな日常の象徴である彼女を聖杯戦争なんかに巻き込むわけにはいかない士郎は兄の慎二が桜に手を出さないように自分の家で匿ったりするわけなんだけれど、これ、序盤も序盤でありながら既に桜を特別扱いしているところがある(状況からくるものなので軽微ではあるけれど)。

士郎は基本誰にでも優しくできる奴なので、1章ではここからそこまで変化はない(と感じた)。

まぁ1章の最後で相棒であるセイバーすら失った士郎が家に帰るとそこには桜が待っているというので演出によるカバーが入っていたらする程度という印象。

士郎から桜への感情が大きく動く(のを彼が自覚する)のは何よりも、「レイン」だろう。

慎二の行動により魔力が暴走した桜は紆余曲折ありこの町にとって危険な存在であると断定されてしまう。

ここらへんの凛の感じもすごいいいんだけど、まぁ今は士郎の話をしているので、先に進むと、士郎は桜を探している中でイリヤと出会い自分の向かう方向性の選択を迫られる(本編でない方を選ぶと鉄心エンド)。

そして、これまでの士郎とはまるで違う生き方、UBWで指摘された矛盾のない生き方、誰かではなく救いたい人のために戦う正義の味方になる生き方を選ぶ。

こうして他のルートとは明確に違う「桜だけの正義の味方」になった士郎は桜のことを第一に行動するようになるわけだけれど、蟲爺に呼び出され驚愕の事実を突きつけられる。

桜は聖杯の中身 = この世すべての悪と繋がりまさしく人類にとっての悪であると。

それを聞いた士郎は激しく動揺し、一度は桜を殺そうとするものの桜との思い出が心に溢れ泣き出す。

そうして再び桜だけの正義の味方になる決心をして中止する。

ここのシーンも、士郎がこれまで全く見せることがなかった表情を出す。

そう、桜が関わるシーンでは他の場面で見せることのない人としての感情が士郎に濃く現れる。

このシステム感動した。

他のルートでは最初こそいたけれど戦いが激化する頃には気がついたら全然見なくなってたキャラだったけれど、それが深く関わってることで他のルートでは決して成し得なかった主人公への影響力を持つ。

お話作りが上手いなぁ!!!!

 

最初こそは日常の象徴でまとめられるんだけど話が進んでいくと複雑になりすぎて簡潔にまとめる術がわからない。

よくわからんが好きだよそういうの。

 

 

そんなこんなで桜がついにああなっちゃって士郎〜早く助けてくれ〜〜〜という2章の終わり。

最終章では麻婆があれやこれや腕があれやこれや凛があれやこれやイリヤがあれやこれやして見せ場がめちゃくちゃ多いが時間に収まるのかなんなら5時間ぐらいの映画になってしまうんじゃないかいや須藤監督ならやってくれる俺は信じるという感じで、

 

 

来年春、この映画のラストを見届けた後に花見をしてくれる人を募集しております。

桜、見に行こう…?